
今年は暖冬ですねえ、ほんとに。スキー場や暖房器具メーカーなどは大変お困りのようですが、寒さが苦手な私としては、朝、ベッドからスムーズに離脱できたり、徒歩での通勤時に辛い思いをしなくて済んだりと、ありがたいことだらけです。気持ちが浮き浮きしてきます。庭の沈丁花のつぼみも、日本水仙のつぼみも、梅のつぼみも、みんなどんどん大きくなってきています。何というか、生きる気力が湧いてきます。
ただ困ることが一つだけあるんです。
それは、あまりに天気がいいのでゴルフ場のことが気になって仕方がない、ということ。我がホームコースでは、私が毎年冬になると姿を消すので、渡り鳥のように冬の間は南の島で遊んでいると思われているようでして、久し振りにコースに電話すると受付のおねーさんに「あーら須田さん、お久し振りぃ。たまにはこっちにも来てくださいよぉぉ」なんて銀座のクラブのママみたいな鼻にかかった声でイヤミを言われたりするのですが、決して余所でゴルフをしているわけではありません。
税理士の業界は、12月の年末調整に始まり3月の確定申告に至るまで、寒い時期はずっと忙しいというのが通り相場です。私だって御多分に漏れず真面目に仕事しているんです。嘘じゃありません。税制改正も毎年4月に行われるので、これに合わせて雑誌の原稿やら本の校正やらの仕事もこの時期に集中します。なんか一生懸命言い訳すればするほど、嘘のように聞こえますが、ほんとに働いているんです。
そして例年なら、私の忙しさに気を遣ってくれるかのように12月になると山の方から雪便りが届き、ゴルフ場はクローズとなって安心して仕事に没頭できるのですが、こう生暖かい風が毎日吹くと、雑念が頭をよぎります。
松尾芭蕉の「旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る」風に言えば、「仕事に倦んで 心はフェアウェイを かけめぐる 邦裕」ってな感じです。本当に困ります。暖冬はヒジョーに迷惑です。気象庁、何とかしてくれー。
でもすべては時間が解決してくれ、あと2週間ほど真面目に仕事に取り組めば、私にも春が訪れます。いよいよオープン戦です。実は私、今年のゴルフには密かに期待していることがあるのです。というのも、生涯のライバル新井さんには絶対に内緒ですが、ある真実を知り、これを実感してしまったからなんです。
このことを一言で説明するのはとても難しいんですが、あえて箇条書きにすると次のようなコンセプトでしょうか。
★何事も、平常心で出来なければ、いい結果は出ない。
★大切な場面で平常心で出来るようになるためには、地道な努力が必要である。
★大切な場面で平常心で出来る確率は、そのために打ち込んだ時間に比例して高くなる。
★仕事も遊びも、そのことに真剣に打ち込んでいる人と一緒にやらなければ面白くない。
当たり前といえばどれも当たり前のことかもしれませんが、実はかなり奥深い真実ではないか、と私は考えています。というのも私は、このことを誰かに教わったわけではないのですが、ギターとゴルフという私が残りの人生をかけるべき重要な二つのテーマを通じて、これらの真実を繰り返し体感しているからなのです。
ギターは、自宅で一人で弾いている分には、まあそれなりの演奏ができます。しかし誰かが横で聴いているだけで、途端におかしくなる。自分以外の人がたった一人いるだけでも、思いもしないところでミスをしたり、盛り上がったところでサビの部分をど忘れしてしまうのです。あがっているというべきか集中力を欠いていると言うべきか、あるいはその両方なのか、とにかく平常心でないことは確かです。まったく情けない話です。自分の度胸のなさが本当にイヤになります。
ゴルフも同じです。上手い人と一緒に回るというだけで、キャディが若い女性だというだけで、途端に自分のリズムが崩れてしまいます。ゴルフは自分のボールを自分のペースで打てばいいだけのゲームなのに。そして一度リズムが崩れると、焦りが焦りを呼び、その日は一日ボロボロになってしまうのです。
なぜこうなってしまうのか。ステージで涼しい顔をしてソロギターを弾いているミュージシャンには、神経というものがないのではないか。最終日に何百人というギャラリーを引き連れて池越えのアプローチショットをビシッと決めるプロゴルファーの目には、観客がカボチャに映っているのではないか。そんな疑いさえ抱いてしまいます。技術の差もさることながら、そういう精神面での強さの差の方が数百倍大きいような気がします。
しかし考えてみれば、私だってセミナーの講師などを頼まれて百人くらいの人の前でお話をすることもあるんです。そして不思議なことに、そんなときはぜーんぜんへっちゃら。へへへのへー、今日は少ねえなー、くらいのものです。だから対人恐怖症などの病気にかかっているわけではないようです。
ということは。要するに「自信のなさ」がすべての災いの元になっているということです。できもしないことを何とかかっこよくまとめようと焦るから、頭が真っ白になってしまうわけです。だからどんな場所でも平常心でいられるようにするためには、結局、そのことを繰り返し繰り返し練習して、自信をつけるより他に方法がありません。練習→本番→失敗→練習→本番→失敗を何十回、何百回と繰り返して、自分の心を強くしていく。これ以外に近道はないようです。恥をかいた数だけ強くなれる、ということですね。
そんなわけで最近の私は、仕事を言い訳にせず、真面目にギターとゴルフの練習に取り組んでいます。ただし練習は、一人でいくらやってもまったく意味がありません。他人の目に自分の恥をさらして、弱い心を鍛える以外に方法がないのですから。
そこでゴルフに関しては、しばらく休学していたカワナミゴルフスクールに復学し、かつて教えを請うた名インストラクター、千葉プロの手ほどきを受けることにしました。迷っている時間などありません。深い反省の下に、一大決心をして心を入れ替えたのです。スクールのスタッフに「須田さん、どうしちゃったの?」と言われても、表情一つ変えず「はい、わたくし、心を入れ替えました」と修行僧のような顔で答えます。
時間は自分で作るもの。仕事が忙しくても、その合間を縫ってちょこちょこ通っていますが、期せずして千葉先生の口からも「これを現場(ゴルフ場のこと)で出来るようにするのが難しいんですよね。」というお言葉を聞きました。
私から見れば神業のようなテクニックを披露してくれる千葉先生でも、いや、もしかするとハイレベルなプロだからこそ、本番でそれを平常心で実現することの難しさをより明確にご存じなのかもしれません。
千葉先生は繰り返し言われます。「須田さん、ゴルフ場に行ったら不安になるから、本能的に昔の自分のゴルフ、いつものスイングがしたくなるんですよ。だからどんどんスイングが小さくなっていくんです。ちょっとやそっとの練習じゃ、今ここで出来ていることを現場で出来るようにはなりません。これを克服するには、練習量を増やす以外に方法はありませんよ」と。まったくそのとおりです。まったくまったくまったくまったく、そのとおりです。
今の私は、4拍子の、大きなスイングを体得するレッスンを受けています。でもまだ上手くできません。だからきっと、オープン戦では元通りになってしまうでしょう。元通りとレッスンのイメージとがごちゃ混ぜになって、めちゃくちゃなことになってしまうかもしれません。でもきっとこれを克服します。昨年のベストスコアは82点でした。今年はこれを上回る記録を打ち立て、ライバルの新井さんを粉砕し、駆逐します。
先日、米女子ゴルフツアーの今季第2戦のフィールズ・オープンで、宮里藍選手が3位に入りました。その紹介記事には、「祝福の花輪を首にかけられ、宮里がほほ笑んだ。最終ラウンドはボギーなしの6バーディーを奪う猛追。「最終日に淡々とプレーできたことが収穫」と話す表情は、プレー中の緊迫感と対照的だった。昨年の全米女子プロ選手権に並ぶ3位。ただ、この時は最終日にスコアを伸ばせなかった。だからこそ、長丁場を耐え、冷静さを貫いてマークしたこの日のスコアは収穫となる。「これを最終組になってもできるようにしたい」と言った」と書かれていました。
レベルの差は比べるべくもありませんが、あの藍ちゃんだって平常心でプレーできることを自分の目標にしているわけです。考え方は同じです。私の目指す道の遙か彼方に、藍ちゃんが同じ方向を向いて歩いているのです。頑張るしかありません。
2月から3月にかけては、年に一度の確定申告のシーズンですので、色々な方が私の事務所を訪問して下さいます。そんな中、2週間ほど前に、Kさんというお客様がお見えになりました。お互いの息災を喜び合い、毎年の申告について打ち合わせをした後、Kさんが「今日は須田さんにお見せしたいものがあります」と仰って、おもむろに本のようなものをテーブルにお出しになりました。
それは、Kさんが熱心にレッスンを受けておられる社交ダンスの発表会のアルバムでした。私はその写真を拝見して、強い感銘を受けました。そこには、いつもの笑顔とは異なるきりっとした表情で、タキシードに身を包みスポットライトを浴び、姿勢正しく女性をエスコートしているKさんの姿が大きく映し出されていたのです。もともと背も高く、端正なマスクの方ですが、それにしてもひときわ凛々しく大きく見える。
これぞ訓練の賜物ですね。打ち込んでおられるからこそ自信があり、他人の目にも触れさせたくなる。大勢の観客の前で、堂々とダンスを披露し、満場の拍手を浴びる。美しいです。私もかくありたい、と思いました。
話は飛びますが、最近けんじ君という20代の若者とすごく仲良くなりました。けんじ君は岡山県から単身上京し、アルバイトをしながらプロのミュージシャンを目指している、ハンサムで笑顔が魅力的な青年です。年齢は親子ほども違うのですが、初めて会話をしたのにものすごく親しみを感じました。というのも彼は音楽というターゲットに真剣に取り組んでおり、その姿勢が私の心を打ったからです。あることについて語るときのまなざしを見れば、その人がそれにどのくらい真面目に取り組んでいるかが分かります。私は彼の目に、スペシウム光線を感じました。
ステージに立つと緊張で指が震えることがあるでしょ?なんて話しかけると、彼は「そうですそうです」と深く頷きます。その頷き方や表情は、本当に音楽を愛し、だからこそ自分の目指すものについて深く悩み、迷っている人独特のものでした。私も音楽が大好きです。もっともっと上手くなりたいと悩んでいます。だから彼の顔を見ていると、彼の考えていることが分かるような気がします。
音楽もゴルフも、どちらもすごく難しいです。やればやるほど奥が深く、手強い相手です。でも難しいからこそ益々挑戦したくなりますし、一定の技術を身につけて、平常心で、涼しい顔をして、美技を披露したくなります。そんなわけで、今月の一押しというより私の当面の目標は、「平常心」でした。
よーし今年は頑張るぞー!!新井さん、この場を借りて言っておくけど、今年の新井銀行は引き出し専用口座にさせてもらうからそのつもりで。それじゃ来月、伊香保で会おうね〜