一部の若い方からおほめの言葉を頂いたので、調子に乗って今月も古いお話を。
前回、アメリカのロックバンドCreedence Clearwater Revival(略称CCR)の「雨を見たかい(原題"Have
you ever seen the rain")」という曲をご紹介しましたが、この曲、メロディも哀愁をおびていて素敵ですが、実はそれ以上に、歌詞がスゴいんです。
日本語に訳してしまうと上手くイメージが伝わらないかもしれませんが、「誰かが昔言ってた。嵐の前には静けさがあるって。確かにそういう経験あるよね。そう言えば、天気のいい日に雨が降るっていうのもあるよ。僕は知りたい。君は見たことがあるだろうか。天気のいい日に降り注ぐ雨を…」というような内容です。記憶に頼って書いていますので、多少違っているかもしれませんが。つまり、Have
you ever seen the rainというのは、本当は"I wanna know. Have you ever seen
the rain , coming down on sunny day?"なんですね。「雨を見たかい」じゃありません。
どうです、すごいでしょう。すごくありませんか?何がすごいか分からない?そうかなあ。私はすごいと思うんですが。というのは、この歌は、要するにお天気の歌なんです。そして、それだけ。天気の歌が全世界のヒットチャートに乗り、一世を風靡したんですよ。痛快じゃありませんか。日本では、洋楽がヒットする要素の大部分は恐らくメロディと演奏者名だと思いますが、ご当地アメリカではこの歌詞で堂々と大ヒット。「あなたを愛してる」とか「抱きしめたい」とか「君を想うと夜も眠れない」とか「ずっとそばにいて」なんてセリフは一つもありません。ラブソングじゃないんですよ。やっぱりバーボン飲みながらビーフジャーキーをかじってる奴ら(なんて言っちゃいけません)は、感性が違う。こういう内容の歌詞でも素晴らしい歌に仕立ててしまう、底知れぬパワーを持っているんですね。ラブソングを作るという行為は、極論すれば求愛行動という動物の本能的な活動の人間版ですから、いわば出来て当たり前。それを超えたところで詩を書くのは、人間だけにできる文化といったら言い過ぎでしょうか。
だいたい今の日本のポップスは、右を向いても左を向いてもラブソングばっかりじゃねえか(突然オヤジによるオヤジ発言飛び出す)!確かにそういう歌詞を聴きたくなる、歌いたくなるときもありますよね。でもそればっかりじゃねえ…。表面的には若者が牛耳っている我が日本ですが、若者もいずれは年をとる。じじいやばばあになったときに「愛してる」だけじゃつらいものがありますよ。天気の歌も必要になる。私も、よく乾いた立派なミイラになるために現在鋭意精進中ですが、そういう心境に近づいてくると、学生時代に一生懸命聞いて覚えた天気の歌のありがたさ、その存在がだんだん大きくなってくるのです。
歌には、メロディとリズムと歌詞といういくつかの構成要素がありますが、その中でも歌詞の存在はとても大きいと思います。こきおろしましたがJ-popにも一流といわれている人の作品の中には、ラブソング以外のジャンルで素晴らしい曲が必ずあります。そしてそういう曲は、不思議と何年経っても記憶の中に残っています。これからもそういう曲がヒットしてくれるとうれしいんだけどなあ。
というわけで、私の今月の一押しは「雨を見たかい」の歌詞(by C.C.R.)でした。
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