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累進課税とは

累進課税という言葉をときどき耳にしますが、これはどういう意味ですか。

現行所得税は「累進課税」制度が採用されており、所得の高い人ほど税金を負担する割合が高くなります。

解説

1.累進課税制度とは
課税対象額が大きくなるにつれて適用する税率が高くなるような税金のかけ方を「累進課税」といいます。現在の我が国の税制では、所得税にも、相続税にも、贈与税にもこの考え方が取り入れられています。
累進課税とは、本来、能力に応じた課税を実現するために考えられた制度です。たとえばAさんとBさんという二人の人がいて、Aさんは専業主婦で収入はゼロ、Bさんは会社の社長で年収2千万円としましょう。この二人が一緒にテレビのクイズ番組に出場し、運良くともに100万円ずつの賞金を得たとします。この場合、Aさんは全体の所得水準が低いので例えばこの賞金に対して税率10%、Bさんはお金持ちだから例えば税率30%を適用しよう、というのが累進課税です。つまり同じ収入でも、負担する税額が違うということで、さまざまな生活レベルが混在する現代の資本主義社会では、適切な課税制度であると考えられています。

2.累進課税の功罪
このような制度ですが、複雑な仕組みだけにさまざまな問題をはらんでいます。
(1)課税期間の問題
たとえば1,000万円を子供にあげようとする場合、ある年に一回で贈与すると、贈与税は何と231万円もかかりますが、毎年100万円ずつ10年間に分けて贈与すると1年あたりの贈与税はゼロ、したがって10年合計で納税額は生じません。つまり、課税の区切りとなる期間の単位の中に、あまり多くの課税対象を詰め込み過ぎると、負担はうなぎ登りになるということです。
(2)課税単位の問題
夫婦で一緒に商店を経営し、1年間に2,000万円の所得が得られたとしましょう。これを夫一人の名前で申告すれば、夫に課税される所得税はおよそ520.4万円ですが、夫婦がそれぞれ1,000万円ずつの利益があったものとして別々に申告すると、各人の負担額は約180万円ずつ、二人あわせても360万円で、夫一人で申告するより1年当たり130万円も安くなります。このように同じ課税対象であるならば、なるべく複数の人に分散したほうが税負担額は小さくなる傾向があることが分かります。
(3)業態による所得発生傾向の違い
以上のことは、それぞれの納税者が自分の考えでやり方を選択できるものですが、これに対して、職種によりやむを得ず発生する「不合理」もあります。たとえば、出版した本がベストセラーとなって最初の年に5,000万円の印税収入があったけれどもその後の9年間は全く売れなくなってしまった作家が支払う税金の総額と、毎年こつこつと500万円ずつ稼ぐサラリーマンが10年間に負担する税金の総額とを比較したら、間違いなく前者のほうが負担は多くなるはずです。なぜならある年に所得が集中すると、その年の税率は大きく跳ね上がるからです。
またサラリーマンが永年勤めた会社を退職したときに受け取る退職金は、かなりの金額になるケースが多いでしょうから、そのまま通常通りに課税したら、その年の給与に対する税金までつり上げられてしまう、という問題が生じます。
このように、累進課税制度にはさまざまな功罪があり、またそのために、やり方次第では上手な節税ができるヒントが隠されているようです。
(平成22年4月現在の法令に基づく)

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