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貸家建築の相続対策

アパートを建てると相続税対策になると聞いたのですが、それは本当ですか。どうしてそうなるのか計算のしくみを教えてください。

貸家を建築すると、さまざまな評価規定により財産の相続税評価額は確実に下がります。ただし建築後のキャッシュフローを考えなければなりません。

解説

1.財産評価の原則
相続税では、亡くなった方の亡くなった日における財産額を集計して税金の計算をしますし、贈与税では、贈与を受けた財産の受贈日における財産額により税額が計算されます。つまり、いずれにしても財産の集計作業が必要になるわけですが、その評価は「時価」によることが原則とされています。とは言うものの、預金や株式のように値段が明らかなものはともかく、土地や建物などについては、主観的判断に委ねると自分勝手な判断が横行して公平な課税ができません。
そこで税法は、土地については路線価という基準を設け、また建物については固定資産税の計算に用いられる固定資産税評価額をそのまま利用することにしています。これにより、どのような不動産でも画一的な評価ができるです。

2.貸家の評価特例
しかし同じ不動産でも、自分が利用する住宅や別荘と人に貸して収益をあげる賃貸物件とでは、条件がかなり違います。というのは、貸家や貸地は借地借家法という法律により賃借人の権利が保証されているため、一旦人に貸してしまうと、オーナーとして気儘にその不動産を処分することが難しくなるからです。
そこで税法は、貸家・貸地についてはそのような賃借人の権利相当額を控除した残額を評価額とすることとしており、具体的には次のように規定されています
(貸す人をA、借りる人をBとしてご説明します)。
貸地--------------
(B所有の建物の敷地となっているA所有の土地)→本来の評価額×(1-借地権割合)
貸家建付地---------
(A所有の土地にA所有の貸家を建ててBに貸す場合の土地)→本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)
貸家--------------
(A所有の土地にA所有の貸家を建ててBに貸す場合の建物)→本来の評価額×(1-借家権割合)
この場合、借家権割合は一部の例外を除いて30%とされており、また借地権割合は路線価図に記載されていますが、東京都下の住宅地では60%とされている地域が圧倒的に多くなっています。したがって上記の評価方法に具体的な数値を当てはめてみると、次のような結果となります(借地権割合は地域により変化しますので下記の数値がそのままあてはまるわけではありません)。

貸 地 本来の評価額×(1-60%)=本来の評価額×40%
貸家建付地 本来の評価額×(1-60%×30%)=本来の評価額×82%
貸 家 本来の評価額×(1-30%)=本来の評価額×70%

このように、人に貸した不動産は評価額がかなり減額される仕組みとなっています。たとえば、1億円の預金を持っている人がそのまま亡くなれば相続財産は1億円ですが、その1億円で土地6千万円、建物4千万円を購入し、これを人に貸したとすれば評価額は下記のようになります(路線価は時価の90%、建物の固定資産税評価額は購入金額の50%であるものとして試算します)。
①土地→6,000万円×90%(路線価減額)×82%(貸家建付地減額)=4,428万
②建物→4,000万円×50%(評価額減額)×70%(貸家減額)=1,400万円
①+②=5,828万円
このように同じ1億円の財産が、預金であれば1億円、賃貸不動産であれば5,828万円となり、なんと約40%も下がってしまうわけです。賃貸不動産の建築・取得は、相続税対策として明らかに効果を発揮します。

3.キャッシュフローも考えて
このように、相続対策として有効な手段となる貸家建築ですが、一つ注意しなければならないポイントがあります。というのは、預金であればいつでも解約できますし、また低金利とはいえなにがしかの収入が毎年得られます。ところが賃貸不動産の場合には、入居率が100%であれば問題ありませんが、空室が生じると状況が激変します。特に借入金で建築する場合には、毎月の返済額に見合う収入がコンスタントに生じなければ事業は破滅します。建物も時間の経過とともに老朽化していくわけで、一定のメンテナンスコストも予算に入れておかなければなりません。相続対策だけを考えていると大きなリスクを招来する可能性もありますから、賃貸物件の市場性等をよく調べ、慎重に判断してください。
(本文は平成22年4月1日現在の法令による)

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